前立腺癌の治療選択について がん研究振興財団の「がんの統計2023」によると、2023年にがんと診断された男性は56万6460人、部位別では1位:前立腺(9万4748人)、2位:大腸(8万7872人)、3位:胃(8万5325人)でした。いかに前立腺癌と診断される人が多いかが実感できる数字です。皆さんの周りでも、前立腺癌で治療を受けている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか?ひとくちに前立腺癌といっても、初期の段階から骨やリンパ節への転移まで病状は様々です。しかし、最近では前立腺癌検診(PSA検診)が普及しているため、初期の段階で前立腺癌が見つかることがほとんどです。その場合は、手術または放射線治療で根治することが可能です。通常、手術はロボット支援下前立腺全摘術が行われます。10日間程度の入院で治療が終了しますが、術後の尿失禁が問題となります。放射線治療には外照射と内照射があります。前者は広く一般的に行われていますが、後者は対象となる方や行っている施設が限られます。いずれも手術のように尿失禁が起きる心配がないのがメリットですが、治療前にホルモン療法や前処置が必要となります。手術と放射線治療のどちらを選んでも根治できる確率は同等と言われていますので、患者さんの年齢、ライフスタイル、合併症などを考慮して担当医とよく相談することが大切です。当院では前立腺癌と診断された方には、通常の外来時間とは別枠で、患者さん、ご家族、医師、がん治療認定看護師の4者で十分な時間をかけて説明するようにしています。 かとう泌尿器科クリニック 理事長 加藤裕二